殺し屋達は、それぞれの顔を伺う。
すると、ある人物だけが、全てを悟った顔をしている。
その人物は、今回木屋町を殺害した犯人。
「フラット」こと、貴船歩由である。
「とりあえず、作戦通りというところでしょうか。」
切迫する空気の中、ガチッと音を立てて、貴船の拘束が外れる。
また、「ザクロ」は自ら名乗り出ることはなかった。
それは当然のことかもしれない。
「ザクロ」は、テーブルの上に首だけで佇む木屋町だったのだから。
「フラット」こと、貴船歩由は竹下と宝ヶ池の反応を伺う。
しかし、その表情は、彼の思っていたものとは異なっていた。
「どうして、そんな顔をしているんですか。」
貴船は、思わず2人に尋ねる。
宝ヶ池と竹下は抵抗しようとはせず、
素直に死を受け入れようとしていた。
「うーん、別に生きる理由ももう無くなっちゃったんだよね。
だから、ここで死ぬのも仕方がないかなって。
最後にあんたを当てられなかったのは、めちゃくちゃ悔しいけどさ。」
宝ヶ池は、悪戯げに笑う。
「ワシも、もう「奇跡の右腕」なんて呼ばれるのには疲れてね。
あの世で、お師匠様と一緒にマジックを盛り上げるとするかな。」
竹下は遠い目をしつつ、微笑んだ。
そして、二人は小さくうめき声をあげる。
どうやら、腕輪から何かが注入されているようだ。
少しの間を開け、宝ヶ池と竹下は机に突っ伏した。
大広間から、このフロアの外部へと繋がる扉が開く。
貴船は、その扉の方へと目を向けた。
あれほどまでに固く閉ざされた扉は、
あっけなく音を立てて開くのだった。
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