はじめに


9/1から9/18まで、声優によるAチーム、俳優によるBチーム、配信者によるCチームの三つに分かれて朗読劇「エイダ」が開催されました。今回、私いとはきは原作者でありつつ、初めて脚本を担当させていただくこととなりました。共同執筆者の奈良さんと共に、さまざまな議論を交わしつつ、最終的に完成させることができました。それもこれも、周りの方々のご協力により達成できたと考えています。本当にありがとうございます。さて、当記事は私の目線から朗読劇「エイダ」の要素をいくつか抜粋して、その意図を述べようと思います。


*マーダーミステリー「エイダ」のネタバレとともに、朗読劇「エイダ」のネタバレも含まれるので、閲覧にはご注意ください。






































各シーンの制作意図


①冒頭のスタンとエイダの会話シーン

前案は、悪魔とエイダが話をするというものでした。最後に出てくるはずの悪魔が冒頭に出るということが面白いと思い組み込もうとしましたが、奈良さんとの議論の末に最後にスタンとエイダの会話シーンへと組み替えました。悩みましたが、結果として変更して正解だったと思います。このシーンは私のお気に入りのシーンの一つになりました。

個人的には、エイダがありのままの人間性を出すことができるのは、スタンの前であると考えていました。だからこそ、本当に優しかった頃のエイダ、そして一人の父親としてのエイダを描くことができたのはとても良かったと考えています。また、この物語の根幹設定でもある「全ての種族が互いに手を取り合うこと」「全ての種族が一つになること」を冒頭に追加したいと考えていました。マーダーミステリーであれば描写することで冗長になってしまうと考えて削っていた部分でしたが、朗読劇という媒体であればセリフに組み込むことができると考えて設計しました。演者様の読み上げもあり、非常によく機能していたと思います。また、私が指示をしたわけではないのですが、演出の三貝さんがしっとりとしたオープニングを作り上げてくれました。私はこのオープニングの演出が好きで、父子の会話の後の余韻のある入りになったと考えています。


②「ミステリー」としてのエイダ

マーダーミステリーとしてのエイダは、真実に辿り着くまでの間の推理はプレイヤーに委ねられます。しかし、その過程をただ再現しているだけでは意味がないと考えました。初見の人が見ても分かりやすいが、ミステリーとしても楽しめるような作品にしたい。特に共同執筆者の奈良さんが重視していた点でもあり、私も賛同した箇所だったので、何度も書き直しつつ今回のような形に至りました。演出として、地図やちびキャラなどを使って図示していただいたのも、脳内でイメージ化しやすくなるので良かったと思っています。


③「メモリーアウト」の判明時期

リリーの魔法であるメモリーアウトの挿入箇所を前半にしたのは、マーダーミステリーと朗読劇の構造が異なると考えたからです。通常のマーダーミステリーでは、メモリーアウトはリリーのハンドアウトにおける隠すべき目標として設定されています。基本的に私が見てきた卓では、この魔法の半分程度が第一幕で明らかになり、第二幕で残りの半分が明らかになる設計となっていました。しかし、朗読劇として再構築する場合には、第二幕でこの情報を出すよりも第一幕で出ていた方が伏線として機能しやすいと考えました。これも議論の末での大きな変更となりましたが、こちらの方が良かったと思います。


④第二幕の戦闘シーン

第二幕でメモリーアウトを詠唱する際に、エイダによる抵抗を描写させていただきました。完全なオリジナルシーンでしたが、私がやりたかったことをやりたいだけ入れさせてもらいました。入れすぎたり冗長になった部分は削ってもらいましたが、それでも私がやりたい箇所は全て採用していただいたので嬉しい限りです。

A:リリーの決意
リリーのメモリーアウトのシーンは基本的には能力の宣言をするだけなので、そこでのリリーの決意を描写したいと考えて入れ込みました。リリーが自分の能力に対して向き合い、そして自分の役目を遂行しようとする強さを表現したいと考えました。


B:マリンの自己犠牲
原作ではヴァルが「エイダに従う」を選択したルートで、スタンを庇う形でマリンが自己犠牲になります。朗読劇では、リリーを守ろうとすることでマリンというキャラクターを深掘りしたいと考えました。マリンの途中のキャラクター描写については、奈良さんにも加筆をしていただきました。


C:ドラゴのフレアブレス
原作では基本的には使用しませんが、今回はエイダの力に対抗する形で使用しました。少し冗長になるかという不安もありましたが、演出の三貝さんの調整で非常に盛り上げていただけました。またドラゴのセリフでは、エイダのことは忘れてしまっても、エイダの遺した決意は別の形で五人の中に残っているということを表現したいと考えました。


⑤記憶を失う前の独白シーン

当初はもう少し簡素なものでしたが、プロデューサーからの要望もあり、長めに設定することになりました。エイダという人間に対して、各種族の王達がどのような気持ちを抱いていたか。それを改めて提示することで、記憶が消えるというメインシーンを、より細かく描写できたのは個人的には好きでした。



感想


いとはきはAチームの初日公演と、Cチームの9/17、9/18の夜公演に参加しました。Bチームに関しては日程の都合が合わなかったため、配信で視聴させていただきました。感想としては単純になりますが、どの公演も演者様の個性やチームとしての個性が出ていて非常に素晴らしかったです。

朗読劇のお話をいただけた時は、嬉しい反面で自分が朗読劇という媒体で、「エイダ」を再構築することができるかどうか不安もありました。ただ作業を進めているうちに、私一人ではなく周囲を頼って良いことに気づき、議論を重ねていくうちにより完成度の高いものへと移っていきました。また、監修という立場からさまざまな仕事の過程を見ていったことで、作品制作への解像度も高まりました。このような関わり方が人生の中であるかは分かりませんが、次の機会がございましたら、より良い作品作りができるよう頑張りたいと考えております。

最後に、今回の朗読劇は様々な方々の協力で完成いたしました。共同執筆者の奈良さん、演出家の三貝さん、プロデューサー様、スタッフ様、演者様。あらゆる協力によって、今回のような素晴らしい劇となったかと思われます。朗読劇エイダに触れていただきまして、誠にありがとうございました。再演や別の作品の朗読劇化があるかどうかは分かりませんが、皆様の一つ一つの感想が色々な方々を動かすと思います。是非ともネタバレのない範囲でツイートを、ネタバレのある範囲で手紙やふせったーなどを利用して感想をいただければと思います。

それでは、ここまでお読みいただきましてありがとうございます。

いとはきでした。
また、どこかで。



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