はじめに


こんにちは、いとはきです。

今回は幽霊屋敷に宿泊するイベントである「暗夜」に参加してきました。現在予約が殺到しているようですが運よく予約が取れたため、同行者とともに一夜を過ごしてきました。非常に感慨深かったので、その体験をレポート記事に書き起こします。

幽霊屋敷は茨城県のとある場所(住所非公開)に座し、過去に監禁殺人事件があったとか、あるいは別の死亡事故があったとか。いずれにしても、間違いなく曰く付きの物件です。どこまでが本当でどこまでが嘘なのかは分かりませんが、全部本当だったら死ぬほど怖いので半信半疑のまま参加することにしました。

今回の目的は「恐怖と向き合うことで、なぜ人は恐怖を感じるのか」を、考えることでした。僕のホラー耐性については、常人よりややある程度です。肝試しやホラー映画ホラーゲームなど、普通に怖いものは怖いですし、びっくりするシーンではびっくりします。そんな僕だからこそ、このイベントでは十分な恐怖を感じられると考えました。

今回のレポート記事では、体験の概要、体験の詳細、体験から得られたことに分かれています。長文となりますので、興味のある箇所だけお読みいただけますと幸いです。

体験の概要


まず端的な感想ですが、今までの人生の中で一番怖かったです。恐らく皆さんが一番気になることは「この幽霊屋敷が本物かどうか」ということかと思われます。これに関して、僕が実際に泊まった経験から言うと「真偽は最後まで分からなかった」と言うのが正直な感想です。中途半端な答えで、申し訳ございません。

ただこのイベントは、少なくともお化け屋敷のようなエンターテイメントではないと思っています。僕が主催者側だとすれば、宿泊中にここで驚かせれば絶対怖がるだろうというタイミングがいくつもありました。しかしそれらのタイミングで、何かが起こることはありませんでした。僕にとってはそのことが逆にあまりにもリアルに感じました。この体験から得られる恐怖という観点から考えると、もし仮にこのイベントが作り物だったとしても、本物の幽霊屋敷に宿泊することで得られるであろう恐怖に限りなく近いと考えられます。

また、このイベントでは霊からの接触が起こると言われています。足音が聞こえたり、叫び声が聞こえる、あるいは触られるなど様々な要素が報告されています。それでは僕達の体験において実際にこれらの要素があったかと聞かれれば、これも「分からない」と言うのが正直な答えです。絶対に誰もいないタイミングでガサガサという音が鳴ったり、室内から響く音が聞こえた気もしたりします。僕はその音が聞こえないように必死に気を紛らわせていました。もっと耳を澄ませていたら、足音や叫び声が聞こえていたかもしれませんが、僕にはそんな度胸はありませんでした。

この幽霊屋敷に宿泊するという体験では、様々なものが得られた気がします。オススメするかどうかでいうと、僕の大切な人にはオススメしたくないです。体験が酷いからではなく、本当に霊がいるかもしれないし、少なくとも体験の性質上で安全が確保されているとは言えないからです。では、今回のイベントを時系列を追って話していきます。



幽霊屋敷に泊まろう「暗夜」体験記



1. 準備

幽霊に対抗する手段を考える時、心霊系のサイトに行くと不安が煽られそうだったのでChatGPTに相談しました。有料版のGPT-4なので、きっと賢いはずです。



「それはユニークな経験になることでしょうね!」という入りから「楽しい滞在になることを祈っています!」という締めくくりまでは慰安旅行の相談のような書き方ですが、箇条書きの内容はかなり秀逸で、AIの進化は凄いと実感させられました。10番に「勇気」を持ってくるというユーモアだけは、何かうざったく感じました。また食べ物に関して聞くと、以下のような回答がもらえました。



このアドバイスを聞き、素直に塩飴とハーブティーを購入しました。幽霊屋敷には水道は通っていないがポットがあると聞いたので、2リットルの水が入ったペットボトルも購入しました。



2. 同行者


同行者には「実家が全焼したサノ」さんというインフルエンサーで会社員の男性を誘わせていただきました。(Twitter: https://twitter.com/sano_sano_sano_)大学院時代からの友人であり、とある理由からお誘いいたしました。それはサノさんが「バケモノ」のような存在だからです。

皆さんは、「貞子vs伽倻子」という映画を知っていますか?コメディとホラーとバトルをごった煮にしたようなカオスな映画です。ちなみに、おすすめはしません。この映画では、貞子と伽倻子という二人の幽霊が出てきます。貞子は、呪いのビデオをきっかけに視聴した人間を殺す幽霊。そして伽倻子はとある家を縄張りにして人を呪い殺す幽霊です。この映画では、貞子による被害と伽倻子による霊的被害が起こります。そんな中、ある男性が貞子の呪いを伽倻子の呪いにぶつけることを考えます。つまり幽霊同士を戦わせるのです。「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!」という言葉を発し、伽倻子の縄張りである家で貞子のVHSテープを再生させていました。結果さらにカオスな展開となるのですが、ここでは割愛します。このことを考えられると、幽霊屋敷という「バケモノ」に対峙できるのは同程度の力を持った「バケモノ」だと思いました。

そこで思い出したのが、サノさんです。サノさんは幾度となく呪いかと思われるような壮絶な体験と出会っていますが、その都度その体験を乗り越えて生き残っています。僕にとって、サノさんはある意味「バケモノのような存在」です。一人であれば押し潰されてしまいそうな幽霊屋敷でも、サノさんと一緒なら乗り切ることができる。そのような意思のもとでサノさんをお誘いしました。サノさんにとっては、ただの不幸の上乗せになってしまったかもしれません。




3. 集合場所〜車内

集合地点に到着してすぐ、主催者である桐木さんが現れました。キックボクサーをしていて元保育士でもあるという、漫画の登場人物のようなプロフィールの方です。お話しした感じの印象では、子供の頃一緒にゲームをしてくれるような近所の優しいお兄さんのような感じでした。こんなにまともそうな人が幽霊屋敷のイベントを運営していることが、ある意味、恐怖でした。

会ってすぐに集合場所で契約書を書かされました。いわゆる、バンジージャンプやスカイダイビングの前に書くような、「安全上何かあっても責任は取りませんよ」という旨のやつでした。僕とサノさんは互いにMBAの習得者でもあるので、何か壺を買わされたり不利な条項がないか注意深く契約書を眺めていたのですが、ただ安全についてのことがメインで書かれていたので、ただただ危険性が脳裏にこびりつくことになるだけでした。スマホの契約時みたいに、読み飛ばせばよかったです。

その後車で幽霊屋敷に向かうまでの間にセイコーマートがあり、内心テンションが上がっていました。セイコーマートは北海道にしか存在していないコンビニだと思っていたので、非日常を密かに感じていました。飲むヨーグルトをウキウキした気持ちで買い、幽霊屋敷に向かいました。これ以降恐怖でテンションが下がるので、ここが僕のテンションのピークです。

それから幽霊屋敷に向かうまでの間に、この幽霊屋敷についての詳細を桐木さんが話してくれました。桐木さんは僕とサノさんに、「お二人は、よくお酒とか飲まれるんですか? 」みたいなテンションで「お二人は、よく廃墟とか行かれるんですか? 」と質問してきたりしました。そういう鉄板ギャグなのかなと思って二人で笑っていたのですが、実際に参加者の中に廃墟に行く方は非常に多くこのイベントはそういった方々にとって、ある意味「終着点」的な意味合いを持つものらしいです。レベル上げをしないまま、初期装備でラスボスに挑むことを自覚させられたような気がしました。

幽霊屋敷には複合的に色々なものが絡んでいるということでしたが、特に大きいものは監禁殺人事件があったという噂でした。実際に屋敷内には死体遺棄が行われたと思われる井戸があり、監禁部屋と思わしき血痕の付着した部屋もあるそうです。話によれば、監禁殺人事件の前にもとある事件があったとのことですが、非公開情報なのでここでは伏せます。




4. 幽霊屋敷について


最悪の屋敷内ツアーが始まったのですが、桐木さんによれば屋敷内の備品が動いているということでした。「幽霊ですか?」と質問すると「これは誰か入ってますね」と不審者の侵入の可能性を示唆されました。個人的には幽霊よりも何をするかわからない不審者の方が怖いので、とてもテンションが落ちました。頭の中には、先ほど署名した契約書が思い浮かび、不審者に襲われた場合にはどう判断されるんだろうと頭で考え続けていました。

屋敷内ツアーの中で、監禁部屋だけは異質さを感じました。1階にある死体遺棄に使われたと思われる井戸を見た時には何も感じなかったのですが、2階にある監禁部屋については明らかに異質な感じがしました。独特の雰囲気と血痕、そして悪臭。幽霊を感じるというよりは、入っちゃいけない場所という感覚を強く感じました。分かりにくいかもしれませんが、深夜の路地裏の細道や高架下に入りたくないような危険を感じる感覚です。僕には霊感はないですが、この部屋だけは雰囲気が違うと感じました。監禁部屋については写真撮影禁止とのことだったので、画像はありません。気になる方は、自分の目で確かめてください。



5. 苦えすと


そんな屋敷内ツアーを終えて、僕達は「苦えすと」と呼ばれるものにチャレンジすることにしました。三つクリアして滞在に成功するとステッカーがもらえ、全部達成すると全額返金という唯一のエンタメ要素です。ただ「苦えすと」には難易度があり、幽霊系のクイズに答えればいいものや神経衰弱をするだけの簡単なものから、暗闇の中で孤立して過ごさなければならないという高難易度のものまで幅広くありました。最初は全部クリアしようと意気込んでいましたが、幽霊クイズで失敗したことや虫系の「苦えすと」に抵抗感があることもあり、結果として三つクリア狙いになりました。桐木さんは深夜に入ると、僕達にとって三つ目の「苦えすと」である「呪いのビデオ」を準備して帰りました。
「呪いのビデオ」の「苦えすと」は電気が消えた状態で、桐木さんが集めた怖い映像の詰め合わせを再生するというものでした。桐木さん曰く、この時間は最も霊による接触が多く、物理的に触られたと感じる人もいるそうです。僕は「呪いのビデオ」よりもこの幽霊屋敷の物音が聞こえるのが怖かったので、食い入るように「呪いのビデオ」に集中しボリュームを上げました。「呪いのビデオ」に集中したほうが相対的に恐怖を感じにくくなることなんて、残りの人生は体験できないと思います。




6. 深夜〜朝まで


何もしないでいると物音が聞こえてしまいそうなので、桐木さんに許可をもらった上で持ち込んだノートパソコンをカタカタと叩いて仕事をしていました。サノさんも同じように仕事をしていたので、幽霊側から見ても、僕達がこんな屋敷に来て仕事をしている姿は怖いだろうなと俯瞰していました。

少し怖くなったのと口が寂しくなったので、持ち込んだ塩飴を舐めようと封を開けようとしました。しかし塩は場に設置して呪いを祓う役割がありますが、食べたからといって邪気を祓うわけではないのではないかという疑念が浮かびました。むしろ邪気を吸収する塩を口に含めば、この幽霊屋敷の邪気を摂取することになるんじゃないかと怖くなり、結局一粒も食べずに終わりました。


またハーブティーについても、ポットのあるキッチンが曰く付きの井戸の隣の部屋にあったので、あまりにも配置が邪悪すぎて断念しました。そんな場所にあるポットは幽霊に呪われているかもしれないし、不審者がイタズラしているかもしれないし、古い家屋なので虫が接触しているかもしれないと考えたためです。いずれにしても、ハーブティーの香りで落ち着くというリターンに比べて、リスクが高すぎます。

結果として、塩飴とハーブティーの茶葉と2リットルの水が入ったペットボトルだけがその場に残り、帰りの荷物が増えそうだと頭を抱えてながら過ごすことになりました。



7. 長い夜と物音


長い夜の中で、外や二階から物音が聞こえることがありました。僕は怖いのであまり触れずにスルーしており、サノさんは同じ考えなのか本当に聞こえていないのかは分かりませんが同じくスルーしていました。古い家屋ということもあり、特に改修されていないこの家では木材が軋むこともあると思います。一度だけ誰かの声のようなものが聞こえましたが、きっと野生の獣の鳴き声なのだと思うようにしました。

大体、深夜二時頃でしょうか。非常に緊張感のある時間が続く中でサノさんがいきなり立ち上がり、「二階にあるピエロの部屋に行きましょう」と言い出しました。僕は、サノさんが本当に幽霊に取り込まれたのだと思いビクビクしていたのですが、どうやらTwitterに投稿する動画で使用するためのピエロの画像の画角が気に入らず、再撮影したいということでした。二人の暗黙の了解で、何か嫌な雰囲気のある二階に立ち寄ることはなかったのですが、動画投稿を行う上で少しでも品質を上げるために恐怖と向き合うのはえげつないプロ魂を感じました。

また、僕にとって唯一の癒しだったのが、コオロギでした。家の中に侵入してきたのか、ずっと鳴き声を発していました。コオロギの鳴き声は幽霊ではなく、かつ、自然のものであったため、僕は本当にありがたいと思い耳を傾けていました。サノさんは虫嫌いらしく「全然癒されないです」と一蹴していました。




8. 朝日〜滞在成功


朝4時半くらいだったかと思うのですが、窓から光が漏れ始めました。この時間から、恐怖が和らいでいくのを感じました。光というものはこれほどまでに安心感を感じるんだと思いました。それから滞在成功の判定基準である7時まで僕達は滞在し続けました。7時になるとステッカーを入れた箱が開き、僕達は荷物をまとめて屋敷を出ました。暑い日差しと眩しい光が、開放感と高揚感を与えてくれたのを覚えています。2リットルのペットボトルの水はそのまま残っていたので、屋敷の前のコンクリート部分に打ち水しておきました。アルプスの天然水なので、幽霊も清められてくれることを祈っています。




9. 帰宅まで

サノさんと茨城観光をしてから帰ろうとしていたのですが、僕が熱中症になってしまいました。滞在中にトイレに行く回数を減らすために水分を制御し、塩飴は呪われている気がして最後まで食べなかったことが原因だと思いました。熱中症は怖いので、絶対に水と塩分は摂ったほうがいいと思いました。

少し怖いというか不思議な話になるのですが、水戸から東京に向かうまで帰り道で、電車の座席で一睡もしていなかったサノさんが爆睡していました。二人とも眠ると起こす人がいなくなってしまうので、仮眠を十分に取っていた僕は起きていました。そんな昼間の電車内で変な声が響いていました。それこそ、獣の鳴き声か赤ちゃんの声と思われるものでした。おそらく霊とかではなく、ペットの連れ込みや赤ちゃんの鳴き声だと思ったのですが、音源を確認しようとトイレに立って戻ってくると音は消えてしまいました。その時は何でも無いことだと思いスルーしていたのですが、サノさんに聞いたら「怖いですね」と軽く流されてしまいました。今思い返すとそこそこ気味の悪い声だったので、それだけがまだ自分の中で消化不良でした。

ともあれ、これで僕の体験記は終了です。


なぜ恐怖を感じるのか。

今回、幽霊屋敷を訪れた目的は恐怖と向き合うことでした。その中で、自分が恐怖していたものは何か、ずっと考え続けていました。今回の体験は非常に怖かったのですが、特に怖さを引き上げていた要素について三つあげようと思います。

1. 当事者感

この幽霊屋敷で最も恐怖感を上げたのは、主催者である桐木さんの存在だと思います。僕達を楽しませてくれるように全力を尽くしつつ、怖がらせようとする加虐心に満ちていました。僕が一番怖いと思ったのは、「不審者の存在」と「暗夜参加者の霊障と思われる事故」でした。不審者は人なので物理的な攻撃を加えてくる可能性もあり怖いというのは明白なので説明を省きます。問題は「暗夜参加者の霊障と思われる事故」の方です。いわゆる、自分と同じような立場に置かれた人間が重大な被害にあったことを説明されることで、当事者感が強調されます。ジムの広告とかで「自分と同じくらいの体重だった人間が、10キロ痩せることができた」というものを見た時、自分にも効果があるように感じませんか?これは、それの最悪バージョンです。「自分と同じようにイベントに参加した人間が、重大な被害にあった」。それを聞いた時、自分もそうなる可能性があるという考えが浮かぶので、これはかなりの恐怖を増長させていました。いわゆる自分がこれから宿泊するのは本当に危ない場所なんだという認識がなされること、観察者側ではなく体験者側になるということ、すなわち当事者感が恐怖を引き上げていました。

2. 連想による認知

僕が今回の体験を経て思った一つは、恐怖は連想による認知から生まれるということです。いわゆる、この音はきっとこれだろう。今見えたのはきっとこれだろう。という感じのものです。恐らくこの幽霊屋敷に何の先入観もなく滞在するよりも、知識を得てから滞在する方が恐怖を感じると思います。主催者である桐木さんの説明により、幽霊と不審者についての情報がありました。これにより、「外からの音=不審者」「内からの音=幽霊」という識別が成り立つようになりました。ただの音だと思っていればスルーしてしまうことが、全てこの識別を通じて認知されるので、二階の軋む音が幽霊の足音に聞こえたり、獣の声のようなものが不審者の声に聞こえることもありました。僕の聞こえたものが、実際に幽霊の足音や不審者の声だったら怖すぎるので、あくまでそうじゃないことにさせてください。




3. 限界の不明瞭さ

また、オフレコでと言われているものもあるので詳しくは書きませんが、この家では複数の殺人事件や死亡事故が関わっているといいます。リングにでてくるの貞子や呪怨に出てくる伽倻子のように単純に理解できるものではありません。この対象が不明瞭であることというのも、こちらに加えてくる被害の限度を測定できないという点で怖いと思いました。

例えばジャンプスケア系と呼ばれる突然大きな音や怖い画像が出てくるビックリ系のホラーゲームを考えてみます。これらのゲームは最初は怖いけれども、驚かせてくる対象やタイミングが次第に分かってくる事から恐怖が和らいでくることが多いのではないでしょうか。

今回の幽霊屋敷は、体験終了時までこれが自分に対してどれだけの恐怖を与えてくるかが測定できません。ホラーゲームやホラー映画でよく言われるのが、「怖いシーンが出てくれば、怖く無くなるというもの」です。つまり、「怖いシーンに行き着くまでのドキドキが恐怖を感じさせる」という表現だと思います。今回の幽霊屋敷はこの「怖いシーン」がいつ出るのかが不明であるという点が、恐怖を増大させていました。また恐怖の量が測定できないので、この「怖いシーン」が出た瞬間に自分が死ぬかもしれないという限度の無さが非常に怖いと感じました。



そのほかに感じたこと


1. 防御本能としての恐怖

人間が本質的になぜ恐怖するかについて、防御本能であるという説があります。これは個人的にかなりしっくりくる考え方で、人間が科学を持つ時代の前に「分からないもの」に警戒する必要があったということからなっています。だからこそ山で日が暮れたときの暗闇にも本能的な恐怖を感じるかと思われます。幽霊に対する恐怖も同様で「分からないもの」に対して警戒する必要があるという防御本能から、そのような感情が生まれるということができます。

このことを強く感じたのが、僕が幽霊屋敷に泊まっていて気づいた恐怖を低減させる方法です。非常に単純なんですが、それは「気を逸らすことにより外部の情報を遮断すること」でした。今回であれば、主催者に許可を取って持ち込んだノートパソコンを開き仕事に集中していました。もし屋敷に集中してわずかな音を聞き逃さないように、わずかな違和感に目を向けるようにすれば、恐怖は増大していたと考えられます。僕はしませんでしたが、寝袋にくるまれた状態でホットアイマスクと耳栓をすれば、何も体験しないまま朝を迎えることができるという仮説が生まれました。

しかし、この対策方法は実際に幽霊に攻撃されることは想定した場合には無力であると思いました。いわゆる恐怖が身を守るための感情である一方で、気を逸らすことは恐怖と引き換えに外部への警戒を放棄することに繋がります。また、幽霊にかかわらずこの上ない恐怖を感じた際には防御反応で気絶するという話を聞きます。脳が許容量を超え、これ以上は恐怖を感じたくないと考えて外界の情報をシャットアウトするという原理らしいです。僕はそれを聞いたときに、状況は全く変わっていないがその状態で行動不能になるのはマイナスしか生み出さないと考えていました。しかし恐怖を強制的にシャットアウトすることには成功しており、結果的に僕が恐怖を低減させる方法ともである「気を逸らすこと」にも通じていることに気づきました。このことから、恐怖は防御本能のために生じるというのを体感として強く感じました。


2. 心霊スポットに行った後、事故や自殺が多くなること

そういえば、暗夜では実際に後日に霊のものと思われる被害が出るそうです。特に帰りの交通事故は多いと聞きました。僕は霊的なものの仕業の可能性も完全に否定できませんが、別の要素も関わっていると思います。

僕やサノさんはこの幽霊屋敷で幸いにも幽霊と対面するなどの体験はしてはいませんが、それでもあの一晩は強烈な体験でした。常に気を貼っているため、過度な緊張や睡眠不足もあります。だからこそ、外が明るくなってからの開放感と日常に戻ってきた高揚感は忘れられません。そしておそらく、緊張と睡眠不足、この開放感と高揚感は事故率を上げていると思います。車で来る方が多いと聞きますが、幽霊屋敷を体験した後は、一度幽霊屋敷から少し離れて安全な場所で仮眠を取った方がいいと思われます。

また、このことは他の心霊スポットにも言えると思います。心霊スポットに行った後は現場での緊張や恐怖と、無事に帰ることができたという達成感や安堵が通常の認知判断を狂わせる可能性があります。幽霊に憑依されている可能性も否定できませんが、どちらかというと認知の歪みに憑依される可能性があるので十分に気を付ける必要があると感じました。




最後に


この記事はただ怖かった体験を大げさにレポートするものではなく、科学的にすべてを証明しようとする無粋な記事でもありません。霊感がないので本当に幽霊がいるかどうかは分かりませんでしたが、幽霊がいてもおかしくないだろうという空気を常に感じていました。当レポートを書いているのが幽霊屋敷ではないので文体が冷静に見えるかもしれませんが、実際に体験しているときは内心夜が明けるのを心から待っていました。

僕が得られたものは、恐怖への様々な考え方です。「なぜ怖いのか」「なぜ恐怖を感じるのか」と言う要素は、今後の人生に役立つと感じました。この体験を誰にオススメするかというと、少なくとも僕の周りの友人で正直頭に思い浮かぶ人はいません。少なくとも、怖いものに苦手意識を持っている人は参加しない方が良いです。「この体験を経て、怖いものを克服!」とはなりにくいと思います。むしろ悪化すると思われます。一方で、本当に恐怖を感じたいという方や唯一無二の体験をしたいという方には適しています。注意してほしいのは、今回の体験は「邦画の地味で陰湿な幽霊屋敷の中で過ごす感覚」に近いです。洋画のビックリ系のホラー映画で得られるような体験とは異なります。前回の幽霊屋敷も途中で閉鎖されてしまったので、もし行く意思があるのであればお早めの予約をオススメします。

以上、僕が体験したレポートとなります。長くなりましたが、ここまでお読みいただきましてありがとうございます。

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