我々は不老不死の方法を探るべく宇宙へと旅立ち、ある惑星に降り立った。
故郷を思い出させるような青い海と空、そして生い茂る緑の木々。


そして何より驚くべき存在は、
我々とほとんど変わらない姿形を持つ宇宙人達だった。
文明水準は我々を下回るが、独自の発展を遂げているようだった。


我々が興味を惹かれたのは、
この星の住民には若い男女しかいなかったということだ。
我々は彼らが不老不死の方法を知っていると考え、調査を行うことにした。


我々と彼らの言語は異なるが、文法体系は近似しており、容易に解読できた。
科学者Aは翻訳機を使い、住民の一人とコミュニケーションをとった。


「それでは、調査を始めさせていただきます」


調査の中で、彼は我々の見た目について、不思議がっているようだった。


「あなたがたは遠い場所から来られたのですね。
 私達とは、どこか見た目も異なるようでございます」


彼は、我々の姿をまじまじと見る。
我々にとっては住民達と我々の姿はよく似ているものだと思っていたが、
どうやら認識は異なっているようだった。


「確かに、我々は年寄りばかりですから。
 しかしあなた方は、とてもお若い。羨ましいばかりでございます」


隊長がそう口にすると、住民の顔は悲しげになった。


「いえ私はもう長くありません。あと数年の命でしょう」


隊員達は顔を見合わせ、それから尋ねた。


「まだお若いというのに……何か病気でもあるのですか?」


すると、住民は迷った後にこう答える。


「いえ、寿命でございます」


隊員達が調査を行うと衝撃の事実が明らかとなった。
この惑星の大気は毒素に満ちており、
彼らが摂取する飲食物は皆汚染されていたのだ。
しかし、彼らはその事実に気づいてさえいないようだった。


当たり前のように毒素を吸い、汚染された物質を摂取しているのだ。
悲劇的なのは、彼らがそれに気づく科学水準に達していないということだ。
我々は宇宙船に戻り、しばらく話し合った。


結論は、このことを伝えること無く去ろうということでまとまった。
毒素や汚染を消失させる方法はあるが、彼らの文明では不可能なレベルだった。
解決策なくいたずらに事実を伝えれば、この星中で大きな混乱が起きかねない。
多くの反対意見がある中で、私たちが下した苦渋の決断だった。
星を去る前に、隊長は住民に尋ねた。


「あなた方は、今の寿命に満足されているのですか?
 もっと生きたいとは思わないのですか?」


隊長の質問に対して、住民はこう答えた。


「私は与えられた人生を全うしようと思います。
 もっとも、この星でも不老不死を追い求める者はいるのですが」


我々は彼と固い握手を結び、それから言い知れない感情に襲われる。
我々は、宇宙船の中で自分たちの行動について議論した。


「あれでよかったんでしょうか? 彼らは何も知りもしないで死んでいく。
 あのような短い時間で、人生を終えていくのですよ?」

「我々にはどうにもできない。
 しかし、重要なことを学んだ。彼らは短い人生の中でも懸命に生きていた。
 我々もそれを見習わなければならない。ときに、君は今日が誕生日だったね」



隊長が尋ねると、科学者Aは照れ臭そうな顔になる。


「覚えていてくださったんですね、ありがとうございます!
 もう、私の人生も折り返しといったところでしょう」


科学者Aはため息をつき、それから窓の外を見た。


「ああ、そろそろ離陸するようですよ」


我々は今年で325歳となる科学者Aの誕生日を祝いながら、
この儚く短い生命を生きる「チキュウ」という星を去り、
我々の愛しい故郷である、エリエス星に向かった。

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