あなたの過去
ここに書いてある内容は、「ミステリーゲーム」の推理には、ほとんど影響しません。推理は、「マーダーゲーム」内の時系列と証拠品のみで完結いたしますので、自己紹介や担当するキャラがどのような人間であるか理解するためにお読みください。
私が殺しをしていた理由ですか?
あなたには、まだ話していませんでしたっけ?
私の生まれは、「九美霧村」という人里離れた小さな村です。
ええ、一時期メディアを騒がせたあの村です。
そこで、私は最愛の娘である雪花と二人で暮らしていたんです。
濃霧が村を包み込み、美しい自然に囲まれている農村。
おそらく、外部の者にはそう伝わっているでしょう。
しかし、私の知る限り、村の人間はあの村を「首斬村」と呼んでいます。
何やら、不気味な名前でしょう?
この村では、外部との接触を断ち、独自の風習が栄えていました。
それが、「首祀り」という儀式です。
日照りが続くのは、「首斬様」の怒り。
その怒りを収めるために、
村で一番若い年齢の女の首を、その父親が切り落とし、祭壇へと祀る。
それが100年も前から続いているようです。
いわゆる、「生贄の儀式」というものでしょうか。
馬鹿げていて、狂った風習だと思いますか?
でも、私たちにとっては、その風習を信じることしかできなかったんです。
ただ、私にとって最悪の日が訪れました。
10年前の日照りの時期、「首祀り」の儀式が行われたのです。
そして選ばれたのは、誰だと思います。
その生贄は、紛うことなき、私の娘、雪花でした。
娘は死に対して怯えていて、私はその様子を見て、一晩中泣いていました。
それから3日後、私は雪花の首を、斧で切り落としたんです。
残酷だと思いますか?最低な親だと思いますか?
私は、他の村人と同じように「首斬様」のことを本気で信じていたんです。
だから、雪花を生贄に捧げるのも、名誉ある行動だと思っていました。
私は、その首を、神様の祭壇へと祀りました。
それは不可思議な光景でした。雪花の首の断面はとても平らでした。
綺麗で、まだくっついて、前の姿に戻るのではないかと思うほどに。
雪花の死体は丁重に埋葬するといって、村長が引き取りました。
これで儀式は、終わりを迎えたんです。
そしてこの日を契機に、日照りは終わり、雨が降り始めました。
「首斬様」の怒りは収まったように思われました。
しかし、私は見てしまったんです。
村長が、雪花の死体を誰かに渡すのを。
不審に思った私は、村長の家に忍び込み、真実を確かめようとしました。
すると、とんでもない事実に気づいたのです。
村長が死体を渡していた相手は、臓器売買のブローカーでした。
村長の家系は、代々、その協力者だったんです。
これで、すべてのことに合点がいきました。
「首祀り」は、単なる建前。
必要だったのは、新鮮な人間の臓器だったんです。
日照りと雨の境目は、村の外部の科学技術で予知できる。
そのタイミングで「首祀り」を行い、怒りが収まったように見せかける。
父親に殺させるのは、強い罪悪感を持たせて
外部にこの事実が漏れるのを防ぐため。
それを聞いた時、私はどんな感情を覚えたと思います?
怒り?悲しみ?憎しみ?あなたには、想像できますか?
意外なことかと思われるかもしれませんが、私は笑ってしまったんです。
自分のしたことも、信じたことも、滑稽でバカバカしくて。
そして、雪花のことなんですが、なぜか、何も思い出せないんです。
どれだけ雪花の所持品を見ても、脳が、記憶を打ち消してしまう。
何もなくなってしまった私は、衝動的に村長を殺しました。
娘と同じように、斧で首を切り落として、平らな断面を作り出したんです。
その瞬間、私は、娘との記憶を少し思い出すことができました。
私は気づいてしまったんです。
頭部が平らに切り落とされた死体を見るたびに、娘を忘れずにいられると。
それから、私はあてもなく復讐を始めました。
「九美霧村」の臓器売買は、
「赤の箒」という新興宗教団体の斡旋によるものでした。
私が気づいた時には、組織自体は崩壊していたんです。
内部抗争か、外部の人間による圧力か、それはわかりません。
教祖もそれを取り巻く幹部も、すでに死亡していました。
ただ、もちろん、その臓器売買を行った人間達の残党は残っています。
そこで、私はひたすらに、繋がりのある人物を殺して回るようになりました。
その殺害方法は、首を平らに切り落とすこと。
中には、名家出身の政治家や権力者もいましたが、同じ人間です。
首を切り落とせば、その断面は私の娘と変わりませんでした。
捜査員が私につけた名前は、「フラット」。
その断面が真っ平ら(フラット)であることから付けられたようです。
これでも私、その名前は気に入っているんですよ。
しかし、私は目的を失ってしまいました。
新興宗教団体は崩壊し、残党も殺し尽くしてしまったのだから。
一人、幹部の残党がいるとは聞いてはいるものの、行方も分からない。
だから、あなたに会いに来たんですよ、ガレット。
もういいでしょう、私の話はこれで終わりです。
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