「バブル」こと竹下波瑠は、
これから自分に起こるであろうことを察し、覚悟を決めた。
ふむ、ワシの人生もこれで終わりか。
死に場所を探してはいたが、まさかこんなところになるとはな。
とはいえ、この世にはもう未練もない、お師匠様はここにはいないのだから。
ワシは、大きく息をついた。
当然のことだが、ワシは木屋町を殺してなどいない。
腕輪から何かの液体が流れ込んでくる。
少しずつ、意識が遠くなってくる。
ゆっくりと、しかし、確実に死が近づいているのを感じる。
そういえば、ワシは、なぜ殺しを続けていたのだろうか。
子供の頃、劇場で見た、お師匠様のマジックを魔法のように感じた。
そして、ワシは死体を自ら作り上げることに、
魔法のような魅力を感じるようになった。
お師匠様の敵討ちではないと、ワシは思っていた。
しかし、今考えてみると、そうでもないのかもしれない。
ワシは、お師匠様からの許しが欲しかったのだ。
あの時、ワシは自分とお師匠様の命を天秤にかけ、
決断することができなかった。
忘れようとはしたものの、心の中では、今でも後悔していた。
ワシの時間は、お師匠様が死んだ時から止まったままだった。
「奇跡の右腕」は、お師匠様という「体」がなければ、何の意味もなさない
どこかで、ガチッと拘束が解ける音がした。
それがどこから聞こえたのか、ワシには分からなかった。
「お師匠様、今そちらに行きますよ。」
ワシは心の中で小さく呟く。
お師匠様の優しい笑い声が、どこかから聞こえた気がした。
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