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「やっぱり、俺は1人で死ぬんだな…」



俺は死にかけの身体で、空を見上げていた。



雲ひとつない、気持ちがいいほどの快晴であった。



襲いかかってきた獣人族との戦闘は切り抜けた。
しかし、油断して、崖から突き落とされちまった。



生きているのが不思議なくらいの怪我だ。
おそらく、もう助からないだろう。



獣人は理性を保ちつつも、
他の亜人よりも本能が強く残っている。



だからこそ、純粋に力の強いものが王座に君臨する。



王の力の強さに疑問を持つものがいれば、
こうやって、自分の力を試しにくるのだ。



俺もそうやってのし上がった。



だから、相手を恨むのはお門違いというものだ。



意識は朦朧としてくる。
遠くから、誰かが近づいてくる。
幻かと思ったが、その影はだんだんと濃くなる。



俺はそこで気を失った。



気がつくと、俺の目の前にいたのは、ちっぽけな人間の男だった。
彼は台車のようなものに俺を乗せて、城の方へと運んでいった。



「お前は…誰だ…ぶっ殺すぞ…」



俺は、そうやって威圧した。
自分でも情けないくらい弱く小さい声だった。



そうだ。
こいつは、昨晩、俺のもとを訪ねてきた人間だ。



名前なんて覚えちゃいねえ、
名前を覚えるなんて面倒なことはしない。



昨晩、単身乗り込み、俺に話しかけてきたこの人間は、
なんでも、この世界を和解させるために、
俺にリスピア公会議に出席してほしいと言っていた。



俺は、笑って追い返した。



獣人国の中でさえ争いは絶えない。
ましてや、種族の異なるリスピア大陸で和解などできるはずがない。



それでも諦めないこいつを、
俺は無理やり掴み、強制的に追い出した。



とっくに、もう自分の国へと逃げ帰っている頃だと思っていた。
しかし、こいつは目の前にいる。



「お前…どうして…」



「お前の兵士が逃げていくのが見えたんだ。
 それを見て、こっちにいるだろうとわかった。」



そう言うと、人間の王は穏やかに笑う。



「獣人国の王ヴァルよ。
 ワシは、エイダ。お前を救ってやる。」



兵士が逃げるような状況で、こいつは俺を助けにきたのか?
見ず知らずの、自分とは種族も異なる亜人だぞ?



俺は、何か胸に打たれるものを感じた。



獣人は、相手に隙を見せたらつけ込まれてしまう。
だからこそ、人前で油断することなんてできやしない。



その後、俺はこいつの手当ての甲斐もあり、一命を取り留めた。
そして、俺はリスピア公会議に出席することとなった。



聖都カタリアには、この世を変えるほどの力がある。
これがあれば獣人の国を力で統一できるはずだ。
和平協定に賛成を投じるのであれば、お前にこの力をやろう。



エイダは、俺にそう言った。
獣人国の他の奴らは、エイダの名前すら知らねえ。
これは、俺と奴の秘密の取引だ。



しかし、エイダは、力を求める俺に言っていた。



「なあ、ヴァルよ。
 力による支配は、不毛なものだ。
 いつか、お前も力と決別できればいいのだがな。」



エイダは、そう言って、悲しそうに笑った。



俺は、こいつが何を言っているのかわからなかった。



あれから10年が経ち、
エイダは「再結会」と称して、俺らを再び呼び出した。



俺はエイダの住むローデン城に向かう道中、
今日、手に入るであろう力について考えるのであった。


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