〜スタン・ローデンの個人配布に戻る〜
僕には、「未来予知」の力がある。
これまで、何度も、このリスピア大陸の危機を予知してきた。
初めは、この能力のことを隠していたが、
周りの人間が噂をしたのか、様々な人が知るようになった。
しかし、僕は「未来」を知っても、
いつも怯えて行動することができなかった。
父さんは、そんな僕とは大違いの人間だ。
僕から、悪い「未来」のことを聞くと、
その「未来」を変えるために、
可能な限り多くの者を救おうとするんだ。
人間であれ、亜人であれ、種族は問わない。
僕は、そんな父さんを尊敬していた。
この大陸には、5つの種族がいる。
人間・獣人族・海人族・妖精族・竜人族。
しかし、これらの種族は互いに関わろうとはしなかった。
そんな現状に、僕は疑問をずっと持っていたんだ。
僕は父さんと、
5種族の王が手を取り合う世界がないか、
ずっと話し合い続けていた。
父さんは、その度に、悲しそうに笑うのだった。
僕は、いつか「未来予知」で
リスピア大陸が1つになる「未来」が見えないかと期待しているけれど、
そんなこと、永遠に叶わない幻想なのかもしれない。
そんなある日、父さんは聖都カタリアを一人で訪れた。
そこに何があるのかは、誰も知らない。
つい最近、偶然に発見された謎に満ちた場所だった。
帰ってきたとき、父さんは何か考え込んでいた。
ただ、何があったのかは、教えてくれなかった。
そこから、僕の父さんは亜人の王達のもとを度々訪れていた。
そして、1ヶ月も経たないうちに、
リスピア公会議で和平協定が結ばれた。
あれほどバラバラだった亜人の王が、
なぜ和解に応じたのかはわからない。
とはいえ、今続いている平和は表面上のものだ。
少しつつけば、崩れてしまうほど脆い。
そして、10年経った今、
父さんの手で作り出した束の間の希望は、
父さんの手で壊されようとしている。
父さんが変わってしまったのは、
つい、最近のことだ。
父さんは、周囲の人間に粗暴な振る舞いをするようになり、
「書斎」に閉じこもるようになった。
そして、1人でブツブツと誰もいない空間で話す事もあった。
まるで、”何かに取り憑かれた”ようだった。
そして、父さんは「再結会」という名前で、
10年ぶりに亜人の王達を再び呼び出すこととなった。
そして、「再結会」の当日。
僕には、「未来」が見えたんだ。
僕の父さんが、このリスピア大陸を滅ぼす。
そんな、地獄のような「未来」を。