はじめに


こんにちは、いとはきです。

皆さんはマーダーミステリーで犯人役を引いたとき、どのような感情になりますか? 最近では減ってきましたが、私はマーダーミステリーに触れ始めた頃、犯人であると知った時に気分が少し落ち込むことがありました。その後、個人的に他のプレイヤーにも聞いてみると、犯人役を好むプレイヤーもいるものの、どちらかといえば犯人役が苦手だというプレイヤーが多くいるように感じられました。

理由は様々あると思いますが、そのうちの一つの理由として受動性という観点があるのではないかと考えました。今回の記事ではこの受動性について考えた上で、その対策法を個人の視点から提案します。具体例まで細かくまとめてしまうと記事が長くなってしまうため、もしまた何か機会があれば共有しようと思います。この記事で書かれていること以外にも、考えられる原因や対策等あるかと思いますので、あくまでこの記事は個人の考えのまとめに過ぎないとお考え下さい。

注意書き:

この文章は一般的なマーダーミステリーの在り方を示したものではなく、筆者であるいとはきが、現在の自分自身の考え方を整理した記事となります。この記事を元に、SNS上で議論をすることを目的としたものではございません。 読み物として楽しんだり、参考にできる要素があればその人の中で参考にしていただければと思います。またこれは2025年4月末現在の私の考えとなりますので、これまでの私の作品に反映されていないものもあるかもしれません。あくまで、今現在の私の考えを共有するものとお考え下さい。


犯人の立ち位置と受動性について



一般的なマーダーミステリーでは、基本的に犯人が存在し、犯人の協力者を除いた参加者がその犯人を探すような構図をとっています。犯人役はマーダーミステリーにおいて特に考慮すべき存在であり、他の登場人物以上に繊細な配慮が必要な立ち位置であると考えられます。

なぜなら犯人役は、基本的に不自由な存在であるためです。まず、犯人以外のプレイヤーについて考えてみます。もちろん彼らにも隠すべき個別のミッションが設定されており、その点では不自由と言えます。しかしこの不自由さはゲームの中核を担うような謎を隠さなければならない犯人に比べると、比較的軽いものとして設定されることが多くあると感じています。私個人としては、犯人役は受け身になりがちな立場であると考えており、それには主に二つの理由があると感じています。


①ゲーム構造上の受動性

一つ目の理由として、犯人役の行動がゲーム構造上、受動的になりやすいという点があげられます。探偵側のプレイヤーは、「犯人を探す」という明確で主体的な目的があるため、プレイヤーとしてもキャラクターとしても積極的に行動することができます。しかし犯人役は、ただ「逃げ切ることを目指す」だけの構造となっていることが多く、主体性を発揮しづらい場合があります。もちろん、「犯行を行う」という行動自体は主体的ですが、それはゲームが開始される以前に完了していることが多く、ゲーム中の行動は限定的になってしまうのです。もちろん、ゲームによっては例外もありますが、犯人役の行動が受動的になってしまう構造が多く存在するのは事実です。


②プレイヤー心理としての受動性

二つ目の理由は、プレイヤーが卓全体の雰囲気やゲーム体験を考慮した結果として、犯人のプレイングが受動的になってしまう点です。犯人役のプレイヤーは、自分のリスクある行動によってゲームバランスが崩れることを恐れる傾向があります。例えば、自分にとって不利な情報を出すことによって謎がすぐに解明されてしまい、他のプレイヤーの楽しみを奪ってしまうことがあります。一方で、有利な行動を取った場合でも、謎が解けなくなってしまい、探偵側の納得感が減ってしまうこともあります。後者についてはシナリオ設計の問題である可能性もありますが、「犯人ならば普通は取らないであろう行動」を敢えて取ることで信頼を勝ち取るような構造が存在し、それが逆に場の納得感を削ぐことにも繋がり得ると考えられます。それがプレイヤースキルとして評価される場合には問題ありませんが、場合によっては場の雰囲気が損なわれる可能性があり、それを気にすることで受動的になってしまう可能性があります。また、原則として犯人役のプレイヤーは、探偵側のプレイヤーよりも人数が少ないため、自分の勝利が他のプレイヤーの満足度を下げてしまうのではないかと懸念する人もいるかもしれません。もちろん、プレイヤーがマーダーミステリーを点数だけの競技として捉えている場合にはこのような懸念は生まれませんが、マーダーミステリーをコミュニケーションゲームと捉える場合には、全体としての満足度を重視するプレイヤーも少なくないと考えられます。

このような理由から、犯人役はゲーム構造的にも対人構造的にも大きな精神的負担を抱えることになります。そのため、自らの行動によってゲームが崩壊してしまうことを避けるために、無難な行動を取り続けるといった傾向が生まれやすくなります。

上記の二つの理由から、犯人役としてのプレイは、ゲームの構造上もプレイヤーの心理面においても受動的になりやすい傾向があると思われます。したがって、犯人を他の登場人物と同様に設計した場合、犯人役のプレイヤーの満足度が著しく低くなってしまうのではないかと考えられます。



解決策の提示

この問題を解決するための方法として、ここでは大きく二つに分けて考えていきます。 一つは「ケア」であり、もう一つは「主体的行動の付与」です。「ケア」は直接的な解決というよりは、受動性というマイナス要素をなるべく減らしたり、相殺して余りある別観点からのプラス要素を与えること。「主体的行動への変換」はそもそも受動性というマイナス要素に着目し、それを主体的な行動に変換することとしています。自分が思いついたものをまとめると、以下のように分類できるかと思います。


ケア




 ①犯人役のゲーム上での立ち位置の強化

  A犯人役にスポットライトが当たるようなストーリー構成

  B犯人役に犯行を行うに値する明確な動機付けを与える。

  C犯人役と犯人に関わる人物の魅力度の増加



 ②犯人役に対するヒントの付与

  A犯人としてのプレイングのヒントを付記する。

  B犯人が行っている隠ぺい工作やトリックについて理解を深めるような詳細を付記する。



 ③犯人の犯人としての行動以外に、主体的行動を付与する。

  A犯行を隠して逃げ切ること以外に、主体的になるようなミッションを組み込む。

  B犯人がシナリオに関わる、特定の選択を行うことができる。





主体的行動への変換


 
①犯人の犯人としての行動自体を主体的な行動になるように変換する。

  A犯行が行われる以前に、犯行内容についての一定の裁量権を与える。

  B犯行中に証拠品に干渉したり、全体に対して影響を与えることを能力上で担保する。


上記ケア③を「主体的行動への変換」のカテゴリーに入れるかどうかは迷ったのですが、結局、犯人の行動としての受動性に対して効果をもたらすものではないので除外しています。上記の表は私が思いついたものを直感的に分類したものとなります。何かのデータに基づくものではないので、その点はご容赦ください。個々の具体例については、何か別の機会でお話ししようと思います。



おわりに~受動性と現状の対策について~



個人的には、シナリオの多くは基本的に「ケア」による犯人の満足度の担保が行われているように思われます。一方で「主体的行動への変換」について綺麗なゲームデザインがされているシナリオは光るものがあり、自分の中でも思い出に残るものがあります。しかしこの「主体的行動への変換」によるゲームデザインのバランス調整は難しく、それが上手く機能しない場合には、「面白そうだったが面白くはなかった」という印象を与えてしまう可能性があります。

私自身の個人的な考えではありますが、やはり犯人は他のキャラと比べて精神的な負荷がかかると考えられます。そのために作家として、その負荷に対してどう報いてあげられるかという点は、シナリオ制作において重要になるだろうと再考しています。

あるプレイヤーに犯人を引いた際の気持ちを尋ねた時、忘れられない印象的な話がありました。それは犯人を引いた時点でゲームを自由に楽しむことを諦め、卓全体が楽しくなるように環境づくりに徹するという内容でした。私はそれを聞いたとき、少し胸が痛くなりました。有料ならば同じだけのお金を払い、無料だとしても同じだけの時間を消費します。それにもかかわらず、満足度に対して不平等さが発生するのはどこか悲しいと感じます。

犯人役のデザインの難しさは強く感じますが、受動性や犯人にかかる精神的負荷を意識し、「ケア」又は「主体的行動への変換」、あるいは他にも何らかの対策を講じることが必要になるかと考えられます。犯人役を引いたときにため息をつかせないような犯人役を作れるよう、私自身も努力し続けたいと思います。

それでは、またどこかで。


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