はじめに
こんにちは、いとはきです。2021年も早いもので終わりが近づいてまいりました。今回の記事はマーダーミステリーを製作したときに何を考えていたのかを思い出し、言語化する記事になっています。製作者としての思考を綴る記事ですので、プレイヤーの方々に需要があるかわかりませんが、2021年のまとめとして残しておきたいと思います。
こうやって作るべきだという「べき論」ではなく、あくまで自分はこうやって作っているという方法論の一つです。そのため、あくまで考え方の一つとして捉えていただければと考えています。
市場調査と方針決定
私は元々経営系の大学院の出身であることもあり、まずはどのようなマーダーミステリーの作品があるのか、それに伴いどのようなプレイヤーがいるのかを調査してみました。調査といってもかなり簡便であり、Twitterで話題となっている作品を購入して実際に体験してみたり、それを好んでいる層が他にどのような作品を好んでいるのかを追跡したりしていました。このとき、自身がコンテンツを出す領域がオンラインであることもあり、そのほとんどはオンラインのものとなっています。当時はオフラインとオンラインでは求められている作品の質や要素が異なるのではないかという仮説を有していたため、このように偏った調査となっております。同じシナリオを体験し、特に親しくなったプレイヤーの方には、実際にインタービューもしてみたこともあります。
インタビュー形式で話を聞いてみると、特に重要視する点として、推理を楽しみたい層、物語を楽しみたい層、駆け引き(ゲーム性)を楽しみたい層など様々に分かれていると感じました。これらは統計的な調査ではなく個人としての感覚としてプレイヤーの求めるものを把握することを目的としたものでした。しかし、現在もこの層の分け方については一定の妥当性があるのではないかと考えています。
こちらの観点につきましては、2020年の小池ウラン様のアンケート調査が分かりやすくまとめられているかと思います。ちょうど一年前ほどの記事となっておりますので現在とは少し異なるかと思いますが、添付しておきます。
「マーダーミステリーの評価ポイントとは?」
https://note.com/dangobug/n/n445ada25d44d
マーダーミステリーの構成要素について
簡単な市場調査の結果、私は大きく分けると物語性・推理性・ゲーム性の3つがマーダーミステリーの構成要素だと考えました。勝手に自分なりの定義をすると、以下のようになります。
物語性:
ゲームの舞台設定や背景。各キャラクターの心情描写を綴ったハンドアウト。納得感のあるエンディング。エピローグなど。
推理性:
奇抜で新しいトリック。綺麗な推理導線など。
ゲーム性:
ミッションによる駆け引き。独自のギミックなど。
これらの要素がどれだけ丁寧に作られているのかがマダミス としての質を高めていくと考えました。もちろんマーケティングやビジュアルの品質などによって売り上げを高めることもできますが、作品としての質を高めるためにはこの構成要素に着眼することは避けられないと思います。
マーダーミステリーの構成要素の分析
先の項では、物語性・推理性・ゲーム性の高いものを作ることが良いマダミス を作ることと書きましたが、これは製作者であればすぐに考えつくものかと思われます。例えば全ての構成要素が優れた作品を執筆することができる場合には、そのような作品を継続して作り続ければ良いでしょう。
しかし、そのような作品を作り続けることができる製作者の方は一握りであると考えられます。自分で体験した限りでは、このような全ての構成要素が優れた作品は数えるほどしかありませんでした。
そこで私自身が考えたことは大きく二つです。一つ目は、自分の得意な要素を独自性が高く優れたものとすること。二つ目は、自分の苦手な要素を許容できるレベルまで底上げすることです。以下で詳しく説明していきます。
前者は自分が得意なことを分析し、それを作品に練りこんで他の作品より際立ったものにすることです。競合となる作品が多い中でプレイヤーに遊んでもらうためにはいわゆる普通の作品では不十分だと想定しました。そのため、どれかの要素において他の作品と比べた際に優れている必要があると考えました。
後者は自分が苦手なことを分析し、それを作品の中で何とかゲームが成立する程度まで底上げすることです。この点に関しては、前者と同程度かそれ以上に大事だと考えています。残りの要素が、いわゆるプレイヤーが許容することができるレベルに達していなければ、どれだけある要素において優れていても人に勧めにくい作品となってしまいます。つまり苦手な要素は妥協すべきという考えではなく、むしろ苦手な要素だからこそ一定の質の担保に努めるべきという考えです。
基本的にプレイヤーは、一つ一つの要素を感覚的に組み合わせて作品全体を評価すると個人的には考えています。その際に、プレイヤーが満足するであろう点と不満足するであろう点をコントロールすることが大事だと考えています。
コンセプト設計とテストプレイについて
正直なところ、自分がこれほどまでにマダミス を書き続けるとは思ってもいませんでした。これは無料作品を二作品出した段階で、自分の伝えたいことがマダミス業界に受け入れられない場合には他の領域にいこうと考えていたからです。
結局のところ、自分の作品が受け入れられるかどうかは、実際に公開してから遊んでもらうまで分かりません。テストプレイで絶賛されたとしても、それは友人や知人だからこその贔屓ということもあり得ます。そのため、最終的には作品を一般公開して反応をうかがう以外に、自身の作品の客観的な評価は得られないかと考えています。
実際に自分が作品を制作し公開に至った中で大事だと思ったことは、常に遊んでもらうプレイヤーを意識することだと思います。もちろん自分が作ったものを趣味として出す場合には考えなくてもよいと思うのですが、商業として販売する場合には自分の作品がどの層に刺さるのかを意識する必要があります。上記で挙げた三要素のうちどれかに特化させる場合には、対象となるユーザーも限定されてくると思います。その中で、自分の作品を届けたい範囲を明確化させることで、作品のコンセプトが決まってくるかと思います。
もちろん万人に受けるようなシナリオを作ることを当初は目指していました。しかし、評価点が違うユーザーに対してすべての需要を満たそうとすれば結局いずれの要素も満足していない中途半端なものになってしまうと考えました。
「マーダーミステリーゲーム」「エイダ」「おにさがし」はいずれも、刺さる人には刺さるような作品であるかと思います。同時に、この作品を楽しめない層は必ず存在するだろうと考えつています。しかし、作者の性質が分かることで、一度作品に対して合わないと考えた人はそれを避けることができるだろうという点でミスマッチも減るかと考えています。もっとも全ての人に合うように方向性を修正していくというのも一つのやり方かもしれませんが、現在のやり方に息詰まるまではこのままの作風でいこうと考えています。
おわりに
どの程度ご参考になるかは分かりませんが、個人的な考え方が多く記載されているものなので、読み物として解釈していただければ幸いです。また、個人的に実行したマーケティング上の施策などもあるのですが、もし需要があればいつか製作者向けなどで公開したいと考えています。
繰り返しになりますが、これは「べき論」ではなく、こういう制作方法や考え方があるという思考の提示になっています。またオフラインではなくオンラインを専門に作っていることもあり、オフラインの製作者に関してはまた異なる方法論があるかもしれません。
2021年は私にとって飛躍の年であり、様々な方との出会いやお仕事がありました。2022年はより多くの方と関わり、多くの方に向けた作品を作れればと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
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