〜マリン・アントワーネの個人配布に戻る〜





やっぱり信じられるのは、財宝だけですわ。



わたくしは、目の前にある鉄格子を恨めしげに見つめました。



昨晩まで女王だったはずのわたくしは、
今や処刑を待つだけの海人に成り下がってしまいました。



水があると逃げ出す可能性があると言われ、
陸の砂浜の上の牢屋に入れられてしまいましたわ。



わたくしたち海人は、環境が目まぐるしく変わる海の中に住んでいる。



だけど、金貨や宝石の価値は変わらない。
だから、わたくしたちは、財宝に執着する。



こんなことになったのも、
変な情けをかけた、わたくしの自業自得かもしれないですわ。



隣国の海人国が、貧困にあえいでいると聞き、
優しいわたくしは、資金援助を行いましたの。



しかし、わたくしの手元には、一銭も残らなかった。



周りが助けてくれるかとも思いましたが、
財産のないわたくしの周りの人間は、わたくしから去って行きましたわ。



そんな中、鉄格子の中にいる、
わたくしの前に現れたのは、1人の人間の王様でした。



彼は昨晩、わたくしの元を密かに1人で訪ねてきました。
なんでも、リスピア公会議に出席してほしいと言っていましたの。



他の亜人がいる会議なんて興味がありませんでしたから、
早急にお帰りになっていただきました。



まさか、まだこの国に、居座っているなんて、
思いもしませんでしたわ。



「確か、エイダ様でしたか、ごきげんよう。
 恐れ入りますが、わたくしをここから出してくださらない?」



わたくしは、無理な願いだと思ってはいたものの、
ダメもとで頼んでみました。



すると、エイダ様は大きく頷いて、穏やかに笑いました。



「もちろんだ、海人族の女王マリンよ。
 ワシは、エイダ。お前を救ってやる。」



そういうと、エイダ様は手に持った包みから、
大量の宝石と金貨を取り出しました。
それは、わたくしが再び王座に戻れるだけの価値がありました。



持っていた財宝を全てわたくしに渡すと、
他の海人が来る前に、彼は去って行きました。



そして、わたくしが財宝を皆に渡すと、
わたくしは再び王座に戻ることができるようになったのですわ。



手のひら返しもいいところだと思いますか?
しかしまあ、海人族とはそういうものなのですわ。



10年前、わたくしはリスピア公会議へ出席しました。
エイダ様へ、ほんの少し借りを返すつもりでしたの。
そして、目的はもう1つございましたわ。



聖都カタリアには、財宝が眠っている。
リスピア大陸の和解に協力してくれるのなら、
10年後、お前にそれを与えよう。



エイダ様は、そうおっしゃいました。



溢れるばかりの財宝があれば、
きっと海人族の全ての国は統一できる。



そうなれば、わたくしの地位が脅かされることもないでしょう。
これは、わたくしとエイダ様だけの2人の秘密の取引でしたわ。
そのため、他の海人達は誰も知ることのない話ですわ。



そろそろあれから10年が経ちますわ。



「再結会」という名前で、
エイダ様はわたくし達を呼び出しました。
いよいよ、財宝が手に入る日が来るのですわ。



だけど、最近、少しだけ思うんですの。
財宝などに頼らず、秩序の保たれた国になればよいと。
しかし、そんな幻想は、泡のように儚い夢なのでしょう。



わたくしは、そんなことを思いながら
エイダ様のいるローデン城へと向かいました。



〜マリン・アントワーネの個人配布に戻る〜

カテゴリー: eida