
はじめに~シナリオにおけるキャラクター~
こんにちは、いとはきです。
マーダーミステリーにおいて、重要な要素の一つとして挙げられるのがキャラクターの魅力です。どれだけ全体のシナリオがよかったとしても、自分が演じたキャラクターに魅力を感じなかった場合には、シナリオを楽しめなくなってしまう可能性があります。
ただし作者がキャラクターの魅力を詰め込んだとしても、それをプレイヤーが理解できなければ意味がありません。そのため、すべてのシナリオがそうであるべきとは思いませんが、プレイヤーにキャラクターを理解させるための要素を織り込む必要があります。
私もまだ勉強中の身ではありますが、個人的な視点からいくつかの例をあげながら、プレイヤーにキャラクターを理解してもらうための方法論を考えていこうと思います。
注意書き:
この文章は一般的なマーダーミステリーの在り方を示したものではなく、筆者であるいとはきが、現在の自分自身の考え方を整理した記事となります。この記事を元に、SNS上で議論をすることを目的としたものではございません。 読み物として楽しんだり、参考にできる要素があればその人の中で参考にしていただければと思います。またこれは2025年8月末現在の私の考えとなりますので、これまでの私の作品に反映されていないものもあるかもしれません。あくまで、今現在の私の考えを共有するものとお考え下さい。
キャラクターを理解してもらうための3つの要素
ハンドアウトには、自分が担当するキャラクターのこれまでの出来事や性格が描写されています。プレイヤーはその描写を元にしてキャラクターを解釈し、自分の中に取り入れていきます。つまりプレイヤーとプレイヤーキャラを繋ぐ、初めての接点となるものがハンドアウトとなります。
ここでプレイヤーがキャラクターの解釈に失敗してしまえば、プレイヤーはキャラクターを理解できなくなってしまいます。キャラクターを理解できなくなると、感情が宙に浮いたような状態となり、シナリオ自体の満足度は大きく低下します。自分が担当しているキャラクターが何を考えているのか分からないままゲームを行うのは、精神的に辛い体験となるでしょう。
私自身が魅力的なキャラクターを作る際に考えていることはいくつかありますが、最低限意識しているポイントは以下の三つとなります。
①キャラクターの性格を間接的に示すようなエピソードを付ける。
②プレイヤーがキャラクターに共感できるようなフックを付ける。
③他のキャラクターとの関係性を想起させるトリガーを付ける。
すべてを説明しようとすると記事が非常に長くなってしまうため、今回は①にのみ着目していこうと思います。②・③については、当記事に需要がありそうでしたら、何かの機会で共有させていただきますのでよろしくお願いいたします。
①エピソードを付けることの意義

キャラクターを理解してもらうことが重要と言いましたが、キャラクターの性格を網羅的に書くことが解決策かというと、それは間違っていることが多いかと思われます。むしろプレイヤーは多くの情報が提示された際にはどの情報が重要でどの情報が重要でないのか振り分ける作業が必要となります。また網羅的に書かれた情報の間に矛盾を感じさせる情報が入っていた際には、深読みしてしまったり、読み違えてしまったりすることが起こりうります。
結論から言うと、キャラクターの性格は直接的に淡々と書くよりも、エピソードを交えて間接的に書く方が、より理解しやすくなると考えています。例えば、誰に対しても優しいお人好しのような男性を書くとしましょう。ここでは直接的に情報を記述する事例と、間接的にエピソードとして情報を記述する事例をそれぞれ示していきたいと思います。
②キャラクターを直接的に記述する方法
まずは、以下にキャラクターの性格を直接記述した場合の例をあげます。
この人物はとても優しい男性だ。子供やおばあちゃんなど困っている人がいたら思わず助けてしまうような人物だ。そのせいでいつも割に合わないことを体験することもあり、くじけそうなこともある。しかし、どんな時でも笑って乗り切るような心の強さを持っている。
ハンドアウトにこのような文章だけが載っている場合、皆さんの頭の中にこの男性のキャラクター像が見えてくるでしょうか。おそらく、キャラクターの輪郭はぼやけており、どのような人物なのか解釈するのに手間取る作業が生じたかと思います。

とても優しい男性というが、本当にそうなのだろうか? 子供やおばあちゃんが困っているなら助けるというが、それは偽善からくる発想なのだろうか、それとも本心からくる発想なのだろうか? どんな時でも笑って乗り切るというが、聖人のような心の清らかな人物なのだろうか? このように様々な疑問が生じながら、このキャラクターを自分の中に落とし込んでいくことになります。
このような書き方が誤っているというわけではなく、自由ロールプレイが多いシナリオであったり、ゲーム性の高いシナリオとは書き方の相性が良い可能性があります。この場合にはプレイヤーが解釈したキャラクターに幅が生じ、ある程度の余白があることからプレイヤーのロールプレイで調整することが可能となります。そのため、作者の用意したキャラクターと解釈違いが起きたとしても、事故が起こりにくいと考えられます。むしろ作品によってはプレイヤーキャラの解釈が思いもよらない方法に進み、上手く噛み合うことで奇跡的な展開が起きる可能性があります。そうなった場合、そのセッションにおける独自性として利点に転じることもあるかもしれません。
一方で作者の中にキャラクター像が明確にあるシナリオにおいては、このような書き方は様々な箇所に綻びが生じさせる可能性があります。例えば追加ミッションにおいて最初の心境から大きく変化が起こるシナリオや、エンディング時に明確な読み合わせがあるようなシナリオなどがこれに当たります。追加ミッションでキャラクターの心境が変化してはいるが、作者が想定している元々の感情がそもそも異なっている。あるいはプレイヤーが想定したキャラクターが、全く異なる形でエンディングの読み合わせを始めることもあるかもしれません。
③間接的な記述例(エピソードを用いた方法)
続いて、以下にキャラクターの性格を直接記述した場合の例をあげます。
主人公は会社で同僚のミスを庇うことになり、上司に理不尽に怒られる。精神的に疲れている中、帰りのバスで老人に席を譲るが、逆に叱責される。それからも何度も自分が親切でしたことが裏目になってしまうことが続く。親切でいることに疲れ、無駄だと思い、「もう、人に優しくするのはやめよう」と思って帰る。しかしそう思った直後に雨が降り、目の前に傘を忘れて困っている人がいた。男性は思わず自分の持っている傘をその人に渡した。雨に濡れて帰る中、「今日親切でいるのをやめようと思ったばかりなのに、全く、俺はこんなに自分の得にならないことばかりするんだな」と呟く。しかしすぐに、それも自分らしいなと思って笑う。
こちらの文章であれば、この人物のイメージが比較的湧きやすいかと思います。おそらく本当に優しい男性であるが、そのせいで割に合わないことをしていることが想定されます。また、精神的に追い詰められた時には少し信念を放棄しようとする弱さがあることから、聖人というほど芯が強いわけではないでしょう。加えて、困った人がいると思わず考えもせずに助けていることから、おそらく根が優しい人物なのだろうと分かります。

このような効果がある理由としては、キャラクターをエピソードを通すことで、プレイヤーの頭の中で動かしやすくなることから生じるのではないかと考えています。単純に何かを覚えるという知識記憶よりも、物事に繋がりがあるようなエピソード記憶の方が印象に残りやすいという話があります。マーダーミステリーでは実際にプレイヤーはキャラクターの人生を体験しているわけではありませんが、エピソードを通じて疑似的に体験し、それが頭の中に残りやすくなるのではないかと考えています。
このようにエピソードとして描くと、そのキャラクターの解像度は大きく上がります。作者の想定したキャラクターとのブレも少なくなり、キャラクターに明確なイメージ感があるシナリオとは特に相性が良いと思われます。その一方で、その弊害としてハンドアウトの文量は多くなってしまうため、推理やゲーム性に振り切っているシナリオではノイズとなってしまう可能性もあります。
さいごに~キャラクターを理解してもらうことの重要性~
今回は間接的にエピソード形式を用いることで、間接的にキャラクターの性格を表現する方法について記述しました。先に述べたように必ずしもこの書き方が正しいというわけではなく、それぞれの作者様ごとに制作しているシナリオとの相性があるため、適用可能かどうかは十分に考えた方が良いかもしれません。
当記事を通じて伝えたいこととしては、プレイヤーがキャラクターを理解してもらうことができなければ、プレイ感を大きく損ねる可能性があるということです。もちろん、キャラクターの心情の動きに共感できないなどのプレイヤーとキャラクターの相性は存在しているかと思います。そのため、どのようなプレイヤーにも理解されるようなキャラクターを描くことは困難です。
ただ、キャラクターをプレイヤーに理解させる工夫を盛り込むことができれば、解釈のズレが起こるリスクを減らすことができると考えられます。プレイヤーがキャラクターの魅力を理解し、シナリオを楽しんでもらえるような仕組みづくりについて、私としても考え続けたいと思っています。
また機会があれば、今回紹介しきれなかった二つの要素についても共有していきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。