こんにちは、いとはきです。

2020年よりマーダーミステリーの制作を開始したのですが、今年で制作を始めてから5年目となりました。そこで今までの活動を振り返りたいと思い、記事にまとめることにしました。思い出深い出来事や作品は多々ありますが、今回は自分にとってはじめての経験という内容に絞っています。制作を始めようか悩んでいる方や、事業として行っていくかどうか悩んでいる方のご参考になればと思います。


1. はじめてのゲーム作り

はじめてのゲーム作りは、中学二年生の時に遡ります。当時の私はデジタルゲームを作りたいと考えました。もちろん本格的なプログラミングなどできるはずもなく、RPGツクールXPという制作ソフトを使うことにしました。RPGツクールXPはWindows上で起動できるPC用RPGを制作するソフトです。当時の私はお小遣いを溜めてソフトをインストールし、パソコン上でRPGを作りました。「ONE STORY」というタイトルのゲームで、魔王を倒すためにアルクという主人公が立ち向かうストーリーです。


しかし高校進学のタイミングで、「ONE STORY」は未完成のまま終わってしまいました。本来魔王だと思われた敵を倒したら、本物の魔王が出てきて過去の世界に旅立つという最悪のタイミングでの制作放棄です。シナリオ展開の風呂敷を広げるだけ広げて回収しない、当時の自分を叱責したい思いです。

この「ONE STORY」は今もハードディスクに眠っており、ごく少数の人にはプレイしてもらったりしています。セリフ回しや展開など嫌な意味でゾクゾクすることもありますが、当時の自分が楽しんで作っていることくらいは分かる作品となっています。大学時代は国際関係学部、大学院時代は経営管理教育部に入り、ゲーム制作とはやや無縁な学業生活を送っています。



2. はじめてのマーダーミステリー体験

2020年の初めの頃の話です。当時は人狼やボードゲームを主に遊んでいましたが、ある時、マーダーミステリーというものを遊ばないかという提案をされました。当時マーダーミステリーは黎明期であり、私自身もその存在自体を知りませんでした。

私が一番最初に触れた作品は「約束の場所へ」という作品です。京都にある「BAR DOTS」という場所で、友人と共にプレイしました。マーダーミステリーというゲーム形式自体を知らなかった私は、ルール説明を受けた時から非常にワクワクしていたことを覚えています。ゲーム終了後、私はこのようなマーダーミステリーというゲーム形式を自分の手で作り出せないかと思いました。


私は仲が良かった友人を集め、「おにさがし」の試作版を遊んでもらいました。この「おにさがし」は私が三作目として世に出した作品です。この「おにさがし」の試作版は今思えば酷い出来であり、マーダーミステリーの体をなしているのかも分からないような代物でした。事実、それから製品版に至るまで、キャラクターの過去・推理・ゲーム性などをほぼ全て入れ替えています。しかしこの試作版を、当時の友人は心より楽しんでくれました。その時の様子を見て、自分が作ったものが誰かを幸せにすることができるならば、それは自分にとっても幸せなことだと強く実感しました。これがマーダーミステリーを作る原点になったかと思います。


3. はじめての作品作り



そもそも、自分が面白いと思うものがお客様に面白いと思ってもらえるのだろうか。「マーダーミステリーゲーム」と「エイダ」の制作に至った最初のきっかけは、このような疑問から生じました。たとえ自分の制作物と業界が求めるものが食い違っていた場合でも、趣味として続けることはできます。しかし私自身の思いとしては、世間が求めるものを提供したいという強い思いがありました。

解決策として考えたのは、とりあえず世に出してそれを実証しようという意図でした。幸いにも2020年当時のマーダーミステリーの作品数は少なく、いわば無料で出せば多くの人が遊んでくれる状態にありました。お客様に実際に作品を遊んでもらいその反応を見ることで、自分がこのマーダーミステリーというゲーム形式を制作するにあたり、この業界から求められるものを作ることができるかという指標にすることができると思いました。

そこで「マーダーミステリーゲーム」は当時の自分が面白いと思う推理要素を詰め込み、「エイダ」は当時の自分が面白いと思う物語要素を詰め込みました。いずれも今制作するとしたら手を加えたい点はありますが、当時の自分は全力を尽くしたつもりです。「マーダーミステリーゲーム」でも好意的な反響をいただき喜んでいたのですが、それ以上に「エイダ」は幅広い層で予想以上に広まっていきました。この時は、感想一つ一つで飛び上がるほど嬉しかったことを覚えています。

この時点で今後もマーダーミステリーを作り続けること自体は、自分の中で確定しました。しかし、次に感じたのはこれを仕事にできるのかどうかということでした。当時の私は大学院を卒業し、ボードゲームカフェを経営することを考えていました。しかし2020年にコロナが流行しだしたことで、断念せざるを得ない状況に陥りました。そこで私は進路を方向して、少し前に断念していた税理士試験勉強を再開して税理士を目指すか悩んでいたところでした。

正直な話、2020年段階ではマーダーミステリーの市場規模は現時点よりもかなり小さく、今後拡大するかも分からない状況にありました。また「エイダ」のヒットに関しても、非常に嬉しい半面で一過性のものとなるという懸念もありました。これはいわゆる「エイダ」以降が鳴かず飛ばずになり、遊ばれない可能性です。また、「マーダーミステリーゲーム」と「エイダ」はいずれも無料で出していたこともあり、有料ならば買うことを控えるという人もいるかと思いました。そのため、この時は本格的な事業として行っていく覚悟はできていませんでした。



4. はじめての有料シナリオ販売

そんな中、これからこの事業を続けていく指標になったのは「おにさがし」の売上でした。「おにさがし」は当時、自分が初めから有料でGM様に向けて販売したシナリオでした。大変ありがたいことに、この「おにさがし」は「エイダ」ほどでのヒットではなかったものの、当時の自分としては十分な売上をあげることができました。この売り上げが経常的に続くのであれば最低限生活ができると考え、このまま事業として継続することを考えました。今思えばやや冒険的な決断だったかと思いますが、一番の分岐点はこの時だったかと思われます。

このような専業でやっていくことを決めた大きな理由は収益面だけではなく、GM様やプレイヤー様からいただいた感想が大きかったかと思われます。マーダーミステリーやTRPG界隈の文化として、遊んだシナリオについての感想をSNS上で積極的に投稿するというものがあります。私が制作したシナリオについても同様に、タイムライン上に感想が投稿されていました。その投稿を見る中で、自分の作った制作物が誰かにとっての小さな幸せになっているということを実感しました。もちろん世の中にあるほとんどの仕事は誰かにとっての幸せとなるものではありますが、誰かが喜んでいてくれることを直感的に把握できる場所に身を置けることは自分の幸せにつながると感じました。このことから、相応のリスクはありますが、自分にとって中心となる事業として行っていくことを決めました。

5. はじめての公演型シナリオ



2023年より、新たな試みとしてオンラインでの公演型シナリオを行うことにしました。当初、公演型シナリオを作成した理由については、より高品質な体験をオンライン上で提供したいという思いからでした。具体的には私自身が面接で選んだ信頼できるGM様に給料をお支払いし、イラスト・盤面・演出なども豪華にするといったものです。オンライン公演はオフライン公演と比べて場所代がかからない分、得られた収益を次回以降の作品の品質向上やGMへの報酬に割り当てることができます。もしオンライン公演が成功すれば、より高品質な作品を作り続けられるような良い循環が生まれると考えました。

オンライン公演自体は店舗単位では行われていましたが、私のような個人単位で行っている方は少ない印象にありました。そのため、当初はGMを雇ったもののほとんど開催されないのではという不安もありました。しかし現在オンライン公演で「タミステ」は300公演以上開催されており、多くの方々にお届けすることができています。これからもGMガイド方式と並行しつつも、新たに公演シナリオをどんどん制作できればと考えています。


6. はじめての挑戦について

昨年から、より制作サイクルを早くしたいと考え始めるようになりました。実はマーダーミステリーゲームやエイダに関しては着想からリリースまで、どちらも2か月以内に完結していました。しかしながら現在はイラスト発注や盤面製作、GMガイドの制作のために時間をいただいています。長期化の理由は私自身にもあり、この5年間で自分の技術もわずかながら成長したこともあり、「自分の能力でできること」が増えてきました。しかしこの「できることが増える」というのが厄介で、思いついたはいいものの単純に工程が多いものやバランス調整に手間がかかるものが現れるようになりました。また選択肢が増えることで、どの選択肢を取ることが最も良いのかの判断が難しく、選択を誤った場合には一度作った物を最初からやり直す必要が生じることになりました。

このような事態に対処するために、去年から制作補助スタッフとしてキャロラインさんが、今年からそらしずくさんが加わることになりました。自分がどのようにして作品を作っているのかを一から教え、私の制作を支えてもらおうと考えてこのようなスタッフを採用しました。このような変化に際して、いとはきの作品からブレるのではないかと考える方もいるかもしれません。しかし私個人の考えとしては、今までの私よりも私らしい作品を作れるようになったのではないかと考えています。制作の過程を一から教えていく中で、これまで行ってきた「いとはきらしい作品」を言語化することで、自分の中に落とし込むことができたのが大きな要因です。また自分にとって負担となっている作業を代替してもらうことで、私自身が作品の中核となる部分により多くの時間を割くことができるようになりました。制作における見落としや客観的意見などもいただくことが多く、これが大きな助けとなったりもします。

現在キャロラインさんと制作している作品で、今年発売予定の物は二点あります。マーダーミステリー「newbies」が完成しココフォリア盤面を待つだけの段階となり、ストーリープレイング「希望の残り火」がテストプレイ段階となっています。いずれも私が自信をもって送り出せるシナリオになったかと思います。また、そらしずくさんと制作している「プラネットマーダー」や「CROSS×ROOM」も良い作品に仕上げられればと考えています。

さいごに、これからマーダーミステリー業界がどう変わっていくのかは分かりませんが、私は業界を拡大していくような役割の人間ではないと考えています。現在様々な方々が、業界人口を拡大しようと尽力しているように思えます。私は業界が拡大すること自体は作者にとってもプレイヤーにとっても非常に重要だと考えているため、その拡大の方向性や方法が正しければ陰ながら応援しております。

ただ私自身はあくまで一人の作家であり、作品を作り続けることが自身の役目だと思っています。これは個人的な考えですが、プレイヤーさんやGMさんが業界から去るきっかけとして、自分がプレイしたいと思える、または、プレイしてもらいたいと思える作品が無くなることがあるかと思われます。そのような状況下で、そのプレイヤーさんやGMさんが去ることを思いとどまることができるような作品を作ることができれば、マーダーミステリー人口を減らすことを防ぐことができるかと思っています。地道な活動ではありますが、これが私がこれからも継続して行っていきたいものとなります。

制作を開始してから5年が経ちましたが、日々、新たなことに気づかされることばかりです。まだまだ成長過程にある若輩者ではありますが、これからも皆さんに少しでも楽しんでいただけるような作品を制作し続けようと思いますので、これからもよろしくおねがいいたします。

それでは、またどこかで。


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